離婚給付契約
離婚給付契約
協議により離婚することを決められたご夫婦なら、次のことも必ず協議して決めておいてください。そして決めた内容は、確実な公正証書にしておくことを強くお勧めします。
未成年の子供がいる場合
- 親権者の指定
- 養育費のこと(金額、始期終期、支払方法等)
- 面会交流(面接交渉)のこと
子供がいるいないにかかわらず
- 財産分与について
- 慰謝料について
- お互いの新生活遂行に支障を来たしたり、新たなトラブルを生じさないためにお互いが守り、注意すべきこと
そのほか、年金分割の合意をすることもできます。
なお、養育費と面会交流については法務省のリーフレットもご参照ください。
公正証書を作成しておくメリット
協議離婚される際に決められたいろいろな約束事を書面にした上、ご夫婦が署名押印してそれぞれが1通づつ持つことにされている方々も多いと思います。それはとても重要で良いことですが、万一その約束事が守られないことがあってもあわてないよう公証役場に足を運び、その私文書を公文書に替えておく(公正証書化しておく)ことを強くお勧めします。なぜなら、次のとおり大きなメリットがあるからです。
メリットその1
当事者だけで作った合意書(私文書)には、実際は法律に反する内容が含まれていたり、行き過ぎた内容になっている場合もあります。公証人が法律的な観点からそれをチェックして適法・適正な内容の書面を作成させてもらいますので将来大きなトラブルになることが避けられます。
メリットその2
離婚給付契約にかかわらず、金銭の支払いを約束する契約の場合、債権者にとっては、債務者が約束通りきちんと支払ってもらえるか不安だと思われます。そこで養育費や慰謝料等を約束通り支払ってもらえない場合に速やかに強制執行することができれば安心ですが、公正証書に債務者が約束が守れないときは直ちに強制執行に服することを承諾する文言(「強制執行認諾条項」といいます。)が入っていれば、裁判判決と同等の効力が認められ、債権者は強制執行することが容易にでき、いちいち裁判を起こす必要はありません。また、民事執行法の改正により、養育費の一部が不履行となった場合には、期限が到来していない債権についても強制執行できるようになり、さらに、差押禁止債権の範囲も通常の債権(4分の3)と異なり、2分の1と減縮され、従来よりも強制執行がし易くなりました。
離婚相談所(よくある質問のコーナー)
子どもの養育費の額を決めるに当たって何を基準とすればいいのですか?
親は子に対して扶養義務を負っていますが、離婚してもこの扶養義務はなくなりません。この扶養義務は、「生活保持義務」と言われていて、子が親と同程度の生活ができるように費用を分担する義務です。これは親族間の扶養義務が、「生活扶助義務」と言われ、自分の生活を犠牲にしない限度で被扶養者の最低限の生活を扶助することで足りるのと区別されています。このことからも養育費の額を決めるに当たっては、養育費を支払う側の親自身の生活の水準が目安となるといえます。
子どもの養育費に相場ってあるのですか?
養育費の額は、子の数、年齢、各家庭の生活水準や親の収入額等個人的な事情によって大きく異なることがあり、単純な相場があるとは言い難いのですが、東京・大阪の裁判官等の養育費等算定研究会の研究結果による養育費算定表が公表されていてこれが一応の目安になり参考になると思います。
離婚に際して子どもの養育費を別れた夫が支払うことと、元夫が子と面会交流することについて取り決めました。ところがその後、養育費の支払いが滞りがちです。そこで、元夫が子どもに会いたいと言ってきても拒もうと考えていますが、問題はありますか?
養育費と面会交流とは別の問題です。「養育費」は子どもを監護し教育して行く上で必要とされる費用です。「面会交流」は子どものすこやかな成長のために有意義なもので、親子の絆を再確認するものでもあります。したがっていずれも子どもにとって必要で大切なものです。そのため親が勝手に駆け引きの道具とすることなどできず、交換条件とはなりえません。同じことは父親側にも言えることで、子どもに会わせてくれないから養育費を打ち切るなんてことは言えないのです。
小学生の子どもが「父親に会いたくない」と言っています。会わせなくても問題ありませんか?
子どものすこやかな成長のためには離れて暮らす親との面会交流はとても有意義で重要であり、養育費を支払う親には励みともなるものです。そこで、まず子どもはどういう理由で父親と会いたくないと言っているのか聞き出しましょう。もしかしたらそれまでの面会交流の在り方に問題があったかもしれません。また、あなた自身が子どもと父親が会うことを嫌がって不機嫌になっていませんか? 子どもの前で父親の悪口ばかり言っていませんか? 子どもは親の態度や言葉を観察しており、幼いなりにいろいろ感じ取って、両親の板挟みになっているのかもしれません。子どもの本音、つまり父親と会いたくないと言っている本当の理由や考えが理解できれば、解決法を見出すことができるかもしれず、あなたの適切な助言や説明で子どもの態度も変わるかもしれません。子どもの本音がつかめないなら親同士で冷静に話し合うことが必要です。子どもの考えや気持ちを確かめることなくその言葉を額面どおり受け入れて面会交流を断つといった軽率な判断は禁物です。相手から面会交流の不当な妨害と疑われ新たなトラブルの火種ともなりかねないからです。
別れた夫から子どもの養育費を支払ってもらっていますが、私が再婚した場合、養育費はもらえなくなるのですか? また逆に元夫が再婚した場合は影響がありますか?
まず、あなたが再婚されて、再婚相手が子どもと養子縁組し養親となった場合には、再婚相手が養親として第一次的に子どもの扶養義務を負うことになり、実親である元夫の扶養義務は第二次的となって原則として元夫は養育費の支払いを免れることになります。これは、養子縁組の制度が未成年の子の保護養育を主たる目的としており、縁組は子の福祉と利益のためになされなければならないものであって未成年の子との養子縁組には子の養育を扶養を含めて全面的に引き受けるという合意が含まれていると解されるからです。再婚相手が子どもと養子縁組しない場合は、再婚相手には子どもの扶養義務は生じないのですが、事実上子どもの扶養を行ってもらえ元夫の養育費に頼る必要がないというなら、事情の変更が生じたとされ、お互いの協議で養育費を打ち切ったり減額したりすることもありえます。
次に、元夫が再婚したというだけでは養育費の支払いに影響はありません。ただ、再婚により元夫の生活状況が当初の状況から大きな変化を受け、当初取り決めたとおりの養育費の支払いが困難になったような場合は、やはり、事情の変更があったと考えられ、お互いの協議で養育費の額を変更することも可能となります。
まだ離婚するかを決めかねている未成年の子が2人いる専業主婦ですが、とりあえず冷却期間を設けて別居し、私が子ども2人の監護者として養育していくことになりそうです。ついては夫から毎月の生活費を入れてもらいたいのですが、その取り決めを公正証書に書いてもらえますか?
はい、可能です。夫婦は婚姻中は同居して協力していくものですが、やむをえない事情により一時的に別居せざるを得ないこともあり、そのような場合に別居期間中でも月々の生活費等を確実に入れてもらうために婚姻費用の分担についての取り決めをし、公正証書を作成しておくことができます。
私は、夫と籍は入れていないものの、長年夫婦と変わらない事実婚状態にありましたが、この度、夫の不貞行為が原因で事実婚を解消することになりました。入籍している夫婦の離婚のように慰謝料や財産分与の取り決めをすることができますか?
はい、できます。社会的に見て婚姻と変わらない事実婚状態にある男女間には、婚姻に認められる効果と同様の効果が認められており、離婚の際の財産分与等は事実婚状態の夫婦がその関係を解消する場合も認められます。あなたのように相手の不貞行為により事実婚を解消せざるを得なくなった場合も、非がある夫に慰謝料請求したり財産分与を求めたりすることもできますので、その合意を公正証書により明らかにしておくことをお勧めします。