私文書認証
私文書(私署証書)の認証
1 私文書の認証とは
私文書とは、一般私人が作成した私法上の法律行為や私法上の法律行為に関連のある事実を記載した文書のことです。そして私文書の認証とは、私署証書の認証とも呼ばれるように、私文書になされている署名・押印又は記名・押印の真正を公証人が証明することです。言い替えると、署名・押印等が正当になされていることを公証人が証明することです。これが証明されると、その文書が署名者である文書の作成名義人の意思に基づいて作成されたことが推定されます。
一般私人でなく官公署等公的機関が作成した公文書についてはその公的機関の権限と責任において成立の真正を証明するのが筋であり、公証人には認証する権限はありません。また文書の内容が真正であることや正確であることを公証人が認証するものでもありません。ただし、公証人は文書の内容が違法、無効等であれば認証することができませんので法令に違反した事項や無効の法律行為等の記載がないかどうかを点検し、審査することになります。
なお、私文書になされた署名等の認証以外に、公証人が持ち込まれた私文書の謄本がその原本と対照して符合している場合に、謄本の認証をすることができます(謄本認証)。
2 私文書の認証手続き
署名等の認証には次の3つの方法があります。
- 面前認証(目撃認証)
- 本人が公証人の面前で私文書に署名・押印する方法
- 自認認証
- 本人が公証人の面前で既に署名・押印がなされている私文書の署名・押印が自分の署名押印であることを自認する方法
- 代理認証
- 代理人が公証人の面前で私文書の署名・押印が本人のものであることを自認する方法
宣誓認証
宣誓認証とは、私文書認証の場合に、認証を受けようとする作成名義人本人(したがって代理認証はできません。)が公証人の面前で証書の記載が真実であることを宣誓した上、証書に署名若しくは押印し、又は既になされている証書の署名若しくは押印を自認したとき、その旨を記載して認証する制度のことです。
認証を求める本人は、公証人の面前で起立して厳粛に「良心に従って真実であることを誓います」などと宣誓して、署名・押印することになります。もし証書の記載が虚偽であることを知りながら宣誓したときは、過料の制裁が科されることがありますが、公証人はそのことを説明した上で嘱託人に宣誓を求めるのです。このような手続を経ることによって、公証人は、その私文書の作成の真正を認証するとともに、その記載内容が真実、正確であることを作成者本人が表明した事実をも証明するのです。
この宣誓認証した陳述書は、民事裁判で当事者や証人が法廷で供述する代りに、又はその準備として裁判所に提出する目的で用いられるほか、将来のトラブルの芽を摘み取っておくため証拠保全の手段として広く利用されています。また、延命措置を拒否する旨の尊厳死宣言や人生の最終段階において希望する医療措置を表明する事前指示書が真意に出たものであることを明らかにするため利用されてもいます。
なお、宣誓認証の場合は、同一内容の証書を2通作成し、手続終了後、認証した証書の1通を嘱託人に還付し、1通を公証役場で保存することになります。
外国文認証
1 外国文認証とは
私文書が外国語で作成された証書であっても公証人は認証することができます。外国の学校に留学する場合、外国に移住する場合、外国での事業や取引を行う場合など、また外国での裁判や行政手続きに提出を求められる各種の書類の認証も公証人が行っています。この場合も認証できるのは私文書だけであり、戸籍謄本や会社等法人の登記事項証明書・登記簿謄本などの公文書を公証人が認証することはできません。ただ、この種の公文書を語学が堪能な翻訳者が必要な外国語に翻訳し、その翻訳者が、添付の公文書の記載内容を誠実に翻訳した旨を記載した宣言書(Declaration)を作成して署名し、これに訳文と公文書である戸籍謄本や登記簿謄本等を添付した上、この宣言書を公証人に認証してもらうことができます。
なお、旅券(Passport)も外務省が発行した公文書ですので公証人が認証することはできませんが、旅券の記載内容をまとめた文書を作成し、その記載が正しいことなどを宣言する宣言書(Declaration)に旅券の写しを添付したものを公証人が認証することはできます。
認証の方式について
お客様の持ち込まれる文書の表題に「アフィダビット」(Affidavit)と表題がありませんか?
アフィダビットとは宣誓供述書と訳され、公証人その他宣誓をつかさどる者の面前で宣誓した上、記載内容が真実であることを確約し、署名したものをいいます。ただアフィダビットにもいろいろのものがあり、その表題があっても認証文に宣誓や宣誓手続きに関する記載のないものもあり、はたして宣誓認証として扱わなければならないのか問題なものもあります。
宣誓認証の場合には、本人が必ず出頭し、証書も2通用意し、手数料も通常の認証より高くなるといった違いがありますので認証を要求する相手方と連絡をとってよくご確認しておくことをお勧めします。
2 認証後の手続き
公証人が認証した文書が海外の送り先で問題なく受け入れられるためには、認証した公証人の署名や公印を別の公的機関がさらに証明することが必要となります。
この公証人の署名の認証をノータリゼーション(Notarisation,Notarization)といい、後者の公的機関の証明をリーガリゼーション(Legalisation,Legalization)といっています。
ですので公証役場で公証人の認証を受けた後は、次のリーガリゼーションの手順に従ってリーガリゼーションを得てください。
- 《 リーガリゼーションの手順 》
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- 公証人の所属する法務局に行き、法務局の長から私文書に付された認証は当該公証人がしたものであることの証明を受ける
- 次に外務省において当該法務局長の公印が間違いないことの証明を受ける。公印証明・アポスティーユ証明(Apostille)
- 最後に提出先の外国の駐日大使館(領事館)で領事による認証を受ける。
- ア 署名者本人が公証役場で認証を受ける場合
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本人の身分確認ができる証明書(運転免許証、パスポート、顔写真付き住民基本台帳カード等)と認印、又は印鑑証明書と実印
- イ 署名者本人の代わりに代理人が公証役場で認証を受ける場合
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- 代理人の本人証明資料
- 本人の印鑑証明書(3か月以内のもの)
- 本人の署名又は記名がある代理人への委任状(本人の実印を押捺する必要あり)
- ア 署名者本人が公証役場で認証を受ける場合
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- 法人の登記簿謄本、登記事項証明書又は資格証明書(3か月以内のもの)
- 代表者本人の場合は会社の印鑑証明書と実印
- 会社の従業員の場合は役職証明書
- 署名者本人の身分確認ができる証明書(運転免許証、パスポート、顔写真付き住民基本台帳カード等)と認印、又は印鑑証明書と実印
- イ 署名者本人の代わりに代理人が公証役場で認証を受ける場合
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- 法人の登記簿謄本、登記事項証明書又は資格証明書(3か月以内のもの)
- 代理人の本人証明資料
- 署名者本人の肩書き付きの署名又は記名がある代理人への委任状(代表者の場合は会社の実印を、それ以外の場合は個人の実印を押捺する必要あり)
- ③で押捺した実印の印鑑証明書(3か月以内のもの)
以上は、通常のリーガリゼーションの手続きですが、東京、大阪や神奈川県内の公証役場では①②の手続きは省略することができます。また、提出先の外国が、ハーグ条約の加盟国ならば、③の手続きは不要です。ハーグ条約の加盟国かどうかは公証役場にお問い合わせください。また、日本公証人連合会のサイトや外務省(各種証明・申請手続きガイド)のサイトも是非ご覧ください。
なお、リーガリゼーションは、常に必要とされるものではなく、文書の提出先が相手国の公的機関等でなく民間会社等であってその相手に異論がなければ不要の場合もありますので、事前に相手によくご確認ください。